STORY
2017.08.25

最先端テクノロジーが最高の品質を支える – DLCコーティングハイバリアPETボトル

ミカフェートのコーヒーは畑選びから収穫、精選、輸送、生豆の保管まで徹底した管理を経て1杯のコーヒーとなります。

おいしいコーヒーを作るために、できることはすべて行う、そんな私たちにとって、焙煎したコーヒー豆をおいしいまま保存しておくことは大きな課題でした。 世界中の気候風土により生まれる香りと味わいを閉じ込めたコーヒー豆は、焙煎した直後から炭酸ガスと共にその素晴らしいコーヒーアロマを喪失させてしまいます。
素晴らしい畑や生産者の努力を知っている私たちだからこそ、そこに堪えがたい想いを感じていました。 そこで開発したのが、ミカフェート独自の「加圧包装」です。この方法によって飛躍的にアロマを保つことができますが、よりバリア性に優れるPETボトルはないか常に探していました。そんな時に出会ったのが、三菱ケミカルの「ハイバリアPETボトル」でした。

プラズマ化学蒸着法という技術によりPETボトルの内側にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)という特殊な膜※1をコーティングしたPETボトルは酸素を遮断、炭酸ガスを閉じ込め、コーヒーのアロマを守る事に成功したのです。

※1 キリンビール株式会社等が特許を保有するDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング技術を用いたPETボトルで、一般的なPETボトルに比べ、酸素で約10倍、炭酸ガスで約7倍、水蒸気で約5倍のバリア(遮断)性を有しています。DLCコーティング技術では、PETボトル内を真空状態にして発生させたプラズマにより薄い炭素膜を内面に蒸着させ、バリア性を大幅に向上させます。



対談:三菱ケミカル 鳴川智也様 × ミカフェート クオリティコントローラー 近藤洋介



焙煎豆のアロマを徹底的に守りたい

近藤: 一般的な焙煎豆や粉の多くは、袋入りか真空パックで販売されていますが、これには、焙煎したての素晴らしいアロマと鮮度が損なわれやすいという課題があります。

ミカフェート クオリティコントローラー 近藤洋介

焙煎後のコーヒー豆は、炭酸ガスを放出しますが、この炭酸ガスが、焙煎豆の素晴らしいアロマを連れて逃げてしまう犯人。焼き立てを密封すれば炭酸ガスは逃げずアロマは保たれますが、炭酸ガスのために袋が膨れて破裂する可能性があるのです。そこで、袋にワンウェイバルブという小さな穴を開け、内部の炭酸ガスを抜くのですが、これでは一緒にアロマも逃げてしまう。また真空パックでは、パックする前に炭酸ガスを可能な限り抜いてしまうので破裂の危険はありませんが、アロマも同時に抜けてしまいます。

そこでミカフェートでは、ガスに耐えられるボトルに入れてお届けする加圧包装を開発。「Grand Cru Café」「RESERVA」「Premier Cru Café」では、シャンパンボトルでの加圧包装でお届けしています。さらに、より多くの方に、ミカフェートのコーヒーをお届けできるよう試行錯誤を重ね、炭酸ガスが発生しても変形しない、炭酸飲料用の耐圧性PETボトルを採用。「COFFEE HUNTERS」シリーズが2010年にスタートしました。これでアロマと鮮度が損なわれる問題は大きく改善しました。

“酸化”との闘い

三菱ケミカル 鳴川智也 様

近藤: 炭酸ガスの課題はクリアしましたが、わずかに酸素が透過する問題が残されていました。これでは、私たちのコーヒー豆が酸化してしまう。このわずかな酸素の透過を、何としてでも阻止したかった。様々な可能性を手当たり次第に探っていました。そんなとき、三菱樹脂(現・三菱ケミカル)さんのプレスリリースと出会ったのです。

鳴川様(以下、敬称略)内側にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)という特殊な膜をコーティングしたPETボトル「ハイバリアPETボトル」ですね。ビールのホームサーバー用の容器に採用されたというリリースでした。

ビールやワイン、清酒などは酸化しやすく、PETボトル化は難しかったのですが、酸素の透過を防ぐDLCコーティングにより製品化が実現しました。

ハイバリアPETボトルの製造方法

DLCの開発には基礎研究5年、製品化まで5年、合計10年ほどかかりました。実は、一時は、事業の撤退を検討した時期もありました。しかし粘り強い技術開発、営業活動が実を結びメーカーさんとのつながりが増え市場が拡大しました。そのうちの1社がミカフェートさんでした。

近藤: ぜひミカフェートで採用したいとコンタクトしたんです。「品質保持のために、ぜひお願いしたい。それも、オリジナルのデザインで!」と依頼しました。しかも、三菱ケミカルさんのご希望ロットには到底及ばない数量で(笑)

コーヒーのおいしさに感動し、社内を説得

鳴川: PETボトルは年間100万本、200万本という規模の大量生産品。小ロットでオリジナルボトルを生産するのは、非常に難しい。しかし、ミカフェートさんでいただいたコーヒーのおいしさに心打たれ、さらに川島社長やミカフェートの皆さんのコーヒーへの熱い想いに感動して、社内を説得。企画がスタートしました。

近藤: 正直なところ、コストは袋などに比べ大幅にアップします。しかし、「すべてはコーヒーのために」です。しかも、私たちの想いに共感していただき、「一緒に作っていきましょう」と言ってくださって本当に嬉しかった。

2015年秋から開発がスタートし、2016年4月には完成して製品パッケージの切り替えにこぎつけていたので、なんと約半年で完成させたのです。

ミカフェートオリジナルのデザインを特注

鳴川: デザインのご提案からサンプル作り、金型作り……と製品化には通常1年ほどかかるのですが、今回は半年で納品できるよう、営業、技術協力して納期短縮の策を探し回りました。デザインにも力を入れ、複数案をご提案いたしました。

当時のデザイン資料

近藤 :どれも素敵でしたが、検討を繰り返し、最終的にこのデザインに。遠くからみるとガラスの瓶のように見えて目を引き、高級感があると好評です。

鳴川 : ボトルにDLC特有のシャンパンゴールド色が付いてしまうのはどうしても避けられないのですが、ボトルのデザインやコーヒー豆の色となじみがよく、結果的により高級感が増しました。これはDLCの想定外の効果でした。


近藤 :社内では官能検査、社外では耐圧検査と、品質に関する試験も継続して厳しく行っています。

鳴川 : 通常のPETボトルは壁面からガスが少しずつ抜けてしまうのですが、DLCコーティングによって酸素透過をカットし、内部の炭酸ガスとアロマは逃がしにくくすることにより風味が保たれています。開けた瞬間びっくりしますね。いいアロマが広がります。

酸素を遮断し、アロマも逃がさないハイバリアPETボトル

近藤 :社内の検査では、通常のPETボトルの1.5倍ほどアロマが保たれていることがわかりました。社内のテストでは味も明らかに違うという結果になりました。

香気成分析方法/ガスクロマトグラフィー
Butanal,2-methyl:華やかなフルーツの香り
2,3-Butanedione:甘いバターのような香り
従来の容器に焙煎豆を挽いた粉の状態で保存した際に検出される香気成分の数値を1とし、ハイバリアPETボトルでの保存時数値を比較したグラフです。三菱樹脂のハイバリアPETボトル(DLC)の採用により3週間経過時点で、従来のペットボルの約 1.5倍のアロマ※が保たれております。Butanal,2-methyl と 2,3-Butanedioneは、コーヒの主要な香気成分であり焙煎後に失われやすいものです。


鳴川 : いい製品になり私どもも嬉しいです。

もっと、おいしいコーヒーのためにできることを

近藤 :コーヒーハンターシリーズは、さらに2017年6月から脱酸素剤を入れています。それまで窒素ガスによって酸素を排除していましたが、その上で吸収した酸素と同量の二酸化炭素が出る高性能の脱酸素剤を加えました。
この先もさらに頂点を目指し、素晴らしい豆の、素晴らしいアロマとおいしさをお客様にお届けしてまいります。

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