STORY
2017.08.25

すべてはコーヒーのために

“Mi nombre es José Kawashima y vengo de Japón.
Quiero estudiar el cultivo de cafe en su instituto.”


私の名前は、川島良彰です。
ここでコーヒーの勉強をさせてください。



18歳、川島良彰は中米エルサルバドルの国立コーヒー研究所にいた。丸暗記したスペイン語でコーヒーの世界へ飛び込んでから40余年--。ひたすらにおいしいコーヒーだけを追い求め、ついに、全ての生産工程を徹底したコーヒー「Grand Cru Café」と、それを味わう為の空間「GRAND CRU CAFÉ GINZA」をつくりあげました。舞台は世界。川島良彰の今を語ります。

コーヒーの道を、切り拓き続けていく


株式会社ミカフェート設立から10年目の節目を迎えた今、胸に抱き続けてきたコーヒーへの想いを一人静かに噛みしめています。
思い返せば、コーヒー豆がどのように作られているかを知りたい一心で、単身エルサルバドルに渡った18歳のときからずっと、私のコーヒーに対する気持ちは変わっていないのかもしれません。もっと、コーヒーのことを知りたい。もっとおいしいコーヒーを飲んでもらいたい。もっと、もっと産地に足を運び、本気でコーヒーを作っている生産者と共に汗を流し、本当においしいコーヒーを作りたい。

常に、真っ直ぐな気持ちでコーヒーと向き合ってきました。すべてはカップに表われる。そう信じて、コーヒー業界に対する憤りも、間違った情報が蔓延する市場に対する苛立ちもエネルギーに変えてきました。手を抜けば、それはカップに表われます。あらゆる工程に最善を尽くし、まじめに手を抜かずに作ったコーヒーと、そうでないコーヒーを、市場が見極めることができれば、コーヒーを取り巻く状況は変わっていく。そんな信念を胸に走り続けてきました。

今の私に大きな影響を与えているのは、生産地での経験です。
世界各地で農園開発に関わったことで、同じ時期に花が咲いても、畑によって実の熟すスピードが異なり、コーヒーチェリーのサイズも甘さも違うことを学びました。同じ農園内でも畑によって微妙に土壌の色が違い、日照時間や風向きなどによるわずかな差異がコーヒーの品質に大きな影響をおよぼすことを知りました。

畑だけではありません。収穫のタイミングから、精選加工の仕方、さらには生豆の輸送、保管方法まで、ありとあらゆる工程が、出来上がったコーヒーの品質を決定づける上で欠かせない要素だと確信するようになりました。

品質のピラミッドを作りたい。



独自の品質規格を作り、品質に見合った価格で販売することを提案し続けてきましたが、以前は、こうした考え方を受け入れる市場が存在せず、理解されるまでに10年の歳月を要しました。まさに、生産者が朝早く起き、土を返すことを繰り返すような地道な営み。諦めそうになる気持ちを奮い立たせてくれたのもまた、すばらしい農園との出会い、真摯にコーヒー作りに励む生産者の存在でした。

彼らの想いに応えたい。品質のピラミッドを作ることは、必ずやコーヒーの価値を上げることにつながる。この10年、強い想いを胸に力を蓄えてきました。

市場が変わりはじめている。そんな予感が私の背中を押します。
内向きなコーヒー業界をものともせず、真のコーヒー愛好家たちが私の考えを理解し、まじめに手を抜かずに作り上げたコーヒーを評価し、支持してくれました。ミカフェートでコーヒーを飲むお客様の多くが砂糖とミルクを入れずに、コーヒーそのものを味わう楽しさの伝道師となってくれました。

コーヒー革命の本拠地「GRAND CRU CAFÉ GINZA」の誕生


コーヒーに対する真っ直ぐな気持ちが2017年4月に結実しました。
中央区銀座の商業施設「GINZA SIX」にオープンしたGRAND CRU CAFÉ GINZAは、コーヒー革命の本拠地。年間100日におよぶ生産地への旅で出会った農園の中でも、単一品種栽培をおこなっている特級畑から最高の木を選んで収穫する天の恵みとも言えるピラミッドの頂点、最高傑作の逸品Grand Cru Caféを楽しんでいただける場を作りたい。栽培技術者として農園開発に携わった40年の経験と、蓄えてきた力が実を結びました。
ただ、私はセレブのためのカフェを作りたかったわけではありません。本当にコーヒーが好きな人に、本物を味わってもらいたい。本物に対価を支払う市場ができれば、次のグレードが自然に生まれ、品質のピラミッドが出来上がっていく。そんな、私の想いが込められた場にしたかったのです。

オープン当日、一人の青年がやってきました。聞くと、以前から、Grand Cru Caféを味わってみたいと思っていて、GRAND CRU CAFÉ GINZAのオープンを知り、遠くから駆けつけたとのこと。「おいしい!」と頬をほころばせたその青年のひと言に、確かな手応えを感じました。

また、翌日には、会社帰りと思われる若い女性が一人でやってきて、銀座の街を見下ろす席に座り、静かにカップを味わっていました。その穏やかな後ろ姿を眺めながら、抱き続けた想いが少しずつ浸透していると、実感することができました。

「川島さんですよね。コーヒーとてもおいしくいただきました」
出張から成田に到着し、ターンテーブルの傍で荷物を待っていると、一人の女性から声を掛けられました。日本航空の機内誌やメニューに載っている写真を見て、私だとわかったのでしょう。こうした何気ない出会いの何と嬉しいことか。長旅の疲れが一気に吹き飛びます。

また、東北にある道の駅のカフェでミカフェートのコーヒーがサーブされていますが、もっとおいしいコーヒーはないかと、地元の人たちが10社ほどのコーヒーをブラインドテストした結果、全員の意見が一致したとのこと。何の先入観もない人たちが、味と香り、おいしさでミカフェートのコーヒーを選んでくれたのですから、こんなに嬉しいことはありません。

まじめに手を抜かずに作ったコーヒーのおいしさは、必ず伝わります。一杯300円のコーヒーから、数万円するコーヒーまで、ニーズに合わせて、最高のコーヒーを提供する。地道な努力を続けることこそが、コーヒーの品質のピラミッドの裾野を広げる近道なのだと、決意を新たにしました。

真摯にコーヒー栽培に取り組む生産者の想いに応えたい

コーヒー栽培農家への真っ直ぐな気持ちが揺らぐこともありません。
離農者が増え続けている現実。コーヒー生産地でも年々栽培農家は減り続けています。そんな中、新たにコーヒー栽培をはじめた生産者組合があると聞き、矢も盾もたまらず、コロンビアに飛んでいきました。

最高年齢は84歳。2012年に組合を作ったという彼らは、長年、首都ボゴダへ供給・販売する野菜を大量生産し続けてきました。大量の農薬を使って。しかし、土地が疲弊し、虫がいなくなり、鳥が飛んでこなくなったことに危機感を抱き、新たな道を探りはじめます。
在来種や固有種を、シェイドツリー(コーヒーに直接日光が当たらないようにする木)として農園に植えることで、植生の多様化を維持できると知った彼らは、野菜から減農薬で日陰栽培農法のコーヒーに切り替える決断をしたのです。
コーヒーは、苗を植えてからコーヒーチェリーを収穫するまで3年を要します。年に何回も収穫できる野菜からの切り替えは簡単ではなかったはず。それでも、彼らは少しずつ、コーヒー栽培に切り替えていったというのですから、その覚悟は半端ではありません。訪れた農園は、ゴミひとつ落ちていないばかりか、彼らの背中を見た息子や孫たちが栽培を手伝うなど後継者も育っていました。

こうした生産者がいても、消費国が適正な金額を支払わなければ、生産者はおいしいコーヒーを作り続けることはできません。相場に惑わされることなく、彼らがコーヒーを作り続けることができる環境を整えてこそ、サスティナブル(持続可能な)コーヒー栽培の実現につながります。
彼らが丹精込めたコーヒーを味わいながら、熱い想いが沸々とわき上がってきました。

信じあえるコーヒーマンたちと、もっとその先へ


「お前を信じてよかった」

世界中で出会った生産者の誇らしい表情が私を突き動かします。
いいコーヒーを作れば、見合った価格で買う。互いをリスペクトし、信頼し合う。対等な立場で、それぞれが己の仕事に責任を持つ。相場に翻弄されることなく、生産者がコーヒーを作り続けることができるように、生産者とコーヒー愛好家の架け橋であり続ける。
10年前に掲げた目標と使命。これからはじまる新たな10年も、まじめに、手を抜かず、真っ直ぐな気持ちでコーヒーと向き合っていきます。

すべては、コーヒーのために。

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