STORY
2017.09.28

[対談]世界でいちばんコーヒーのおいしいエアラインに – 日本航空 × ミカフェート José. 川島良彰

機内で、本当においしいコーヒーをお客様に提供したい

その依頼はミカフェートにとって素晴らしい申し出であり、同時に大きな挑戦でもありました。地上のゆったりとしたカフェとは環境の異なる航空機のギャレーで、お客様がこれまで飲んだ事のないおいしいコーヒーを淹れる。依頼を受ける際に川島の出した条件は一つ。『納得のいくコーヒーを提供できるまで一切の妥協をしない事』。日本航空×ミカフェートの挑戦は、2009年の国内線ファーストクラスでのGrand Cru Café提供にはじまり、2011年には国際線・国内線の全路線・全クラスへ拡大。いまなお進化しつづけています。日本航空の全線で飲めるミカフェートのコーヒー『JAL CAFÉ LINES』の誕生から現在までのストーリーです。

対談:日本航空株式会社 商品・サービス企画本部 開発部 客室サービスグループ グループ長 田中 誠二 様 × ミカフェートJosé. 川島良彰(以下、敬称略)


酸味のコーヒー

田中:私自身のミカフェートのコーヒーとの出会いは、元麻布のミカフェートのカフェ(2017年7月まで営業)でした。当時は、深煎りコーヒーの全盛期でしたが、いただいたミカフェートのコーヒーは、まったく別物。あえて例えるならワインのようだと感じました。コーヒーがフルーツだということを実感したのです。コーヒーでこれまでに感じた事の無かった、口の中に広がる余韻の長さをGrand Cru Caféで感じました。コーヒーの概念が変わった体験でした。雑味がなく、温度による味の変化があり、まるでキャラメルやバニラのような自然なフレーバーを感じました。それを川島さんに伝えた際に「コーヒーの中に色々な味わいがある事を指摘してくださったのが嬉しい」と言ってくださったのを今でも覚えています。

ファーストクラスのみならず全路線・全クラスのコーヒーでこの世界観を展開できれば、お客様に感動していただけると感じました。

川島:きょうは、ミカフェートの旗艦店GRAND CRU CAFÉ GINZAで、あらためてGrand Cru Caféを味わっていただいていますが、いかがですか?

田中:おいしいです。コーヒーは、香りだとあらためて思います。そして、この酸味ですね。煮詰まって酸化した、いやな酸味ではなく、フレッシュなこの酸味。初めてミカフェートのコーヒーを飲んだときに、コーヒーの酸味のおいしさを発見した喜びを思い出します。

日本航空の機内で本当においしいコーヒーを提供することを考えたとき、まず本当のコーヒーのおいしさとは何か、「どういうコーヒーにするか」という議論からスタートしました。それで、この香りと酸味を味わっていただくため、世の中が深煎り全盛期のときに、コーヒー本来のおいしさが引き立つ焙煎度合いのコーヒーを打ち出すこととなったわけです。

それに、機内は乾燥していますから、香りですっきりとリフレッシュしていただくためにも酸味のあるタイプのコーヒーがふさわしいと考えたのです。




きっかけは、お客様の声

田中:機内のコーヒーの見直しのきっかけは、お客様の声でした。機内で提供される飲み物に関するアンケートで、いちばん多くのお客様が機内で飲みたいものとして「コーヒー」をあげられていて、さらに「もっとおいしいコーヒーを飲みたい」というお声もいただいたのです。コーヒーはお客様が最も重視する飲み物の一つで、特にビジネスパーソンに飲まれているという認識がありました。このお声にお応えしてコーヒーを劇的においしくすることで「日本航空は変わった」と感じていただけるのではないかと考え、コーヒーを強化しようということになりました。それで、2010年の冬からはじまった日本航空の全サービスのつくりなおしを機に「世界でいちばんコーヒーのおいしい航空会社」になるべく、当社の取締役が川島さんにご協力をお願いしたのです。

この前年の2009年9月、国内の一部路線のファーストクラスで、ミカフェートのGrand Cru Caféを提供する期間限定のキャンペーンを展開していました。このキャンペーンが大好評で、キャンペーン期間中にお客様の搭乗数が増えるという成功をおさめました。これを端緒に全線での提供への挑戦がはじまったのでした。

川島:川島:2009年9月、国内線ファーストクラスのお客様にGrand Cru Caféがはじめて提供される日に私も乗客として搭乗しました。カップを持つ手がふるえるほど緊張したことを覚えています。


一切の妥協を排した7か月間

川島:2009年9月からさかのぼること7か月、その時はじめて日本航空の取締役が訪ねてこられて、「世界でいちばんコーヒーのおいしいエアラインを目指したいので力を貸してほしい」とおっしゃった。ミカフェートのコーヒーを認めていただけたという喜びとともに、重責に身の引き締まる思いでした。

私は、本当においしいコーヒーのために、コーヒー畑の土づくりから、カップ一杯のコーヒーとなってお客様のもとに届くまですべての工程を徹底的に追及し、こだわりぬいてきました。この哲学は、どんな取り組みにおいても、変わることはありません。

そこで、今回の取り組みにあたっては、コーヒーを提供する現場である機上のオペレーションに及ぶすべての工程において御社が全面的に協力していただけるなら、全力を注ぎます、というお話をしたのです。これに対して、その取締役は全面的に協力することを約束してくださいました。

田中:川島さんにお願いしたときにふたつ返事でお受けくださったのですが、引き受ける条件として、「『妥協しない』ということさえ一緒にやってくれればぜひご協力しましょう」とおっしゃってくださった。なによりもまずクオリティで物事を決めるということが、私たちのプロジェクトの大前提となりました。

川島:その日からの約7か月、約束どおり日本航空のすべてのスタッフが労を惜しまず協力してくれました。まずは、機内の環境を地上に再現した羽田空港のモックアップで、機上でのコーヒー抽出のオペレーションの確認から始まり、豆の挽き目や保管方法、抽出方法などあらゆる工程で試行錯誤を重ねました。

私がコーヒー業界で最も尊敬し信頼している石光商事株式会社の研究開発室室長(当時)の石脇智広さんに全行程を科学的に検証していただき、最適な抽出方法を模索しました。そして機上での抽出実験と検証のために、当該機体が運航している路線を何度も何度も往復したものです。抽出実験では淹れたコーヒーの温度と味のデータを5分ごとに取り、冷えていく過程における味わいを確認しました。冷めてもおいしいコーヒーが、本当においしいコーヒーであるとの想いからです。

田中:川島さんがおっしゃる通り、コーヒーは冷めるほど、その品質がはっきりと感じらました。冷めてからの味わいは非常に重要であると実感したのです。

このテストフライトでの川島さんたちの実験を、私も客室のほうから見ていたのですが、ギャレー(食べ物の調理や準備をする場所)からふわーっと、コーヒーを淹れているすごくよい香りがしたんです。コーヒーは淹れているときの香りにそそられるというか、あらためて、コーヒーは香りが大事なんだなと感じました。そして「どういうコーヒーにするか」という最も大切なポイントを再確認したのです。



涼しい機内での抽出

田中:機内は涼しいため、温かいコーヒーをカップでお出ししてもすぐに冷めてしまいます。さらに、狭いギャレーの中で、客室乗務員の皆さんが誰でも同じ味で抽出できる最善の抽出方法は何かという課題に対して、川島さんから「この環境でおいしいコーヒーを淹れるのであればフレンチプレスがよいのではないか」というご提案をいただきました。

コーヒーメーカーは個体差があるし、すぐ冷めてしまうという課題がある一方、フレンチプレスは機内の条件下で安定的に誰でも一定のおいしさで抽出ができて、ご注文ごとに淹れるため温かいまま提供できるためです。

川島:フレンチプレスでの提供にあたっては、コーヒーの細かな粉がカップの底にどうしても残ってしまうことが問題でした。この問題を克服するため、コーヒーをパッケージ包装する際、微粉を徹底的に取り除いておく処理を施しました。これにより微粉による飲みにくさは解消し、滑らかな口当たりのコーヒーを提供できるようになり、フレンチプレスを採用することに決めたのです。


緊張の瞬間

川島:2009年9月は、こうして積み重ねてきた実験と検証の成果が試される日でした。客室乗務員が機内のギャレーで飲み物を準備し始めたときのことは忘れられません。機内に、芳醇なコーヒーの香りが広がり、ファーストクラスの乗客たちが一斉に顔を上げたのです。機上でこれほど豊かなコーヒーの香りに包まれるとは、きっと誰も思ってもいなかったに違いありません。私は、その乗客の様子に手ごたえを感じつつも、震える手でカップを口に運びました。それは間違いなく本当においしい一杯でした。思わず、石脇さんと握手しました。

コーヒーを味わいながら、それまでの半年間、試行錯誤しこだわりぬいた機上でのコーヒーの淹れ方を、客室乗務員の方々が完全にマスターしてくれたことへの感謝と感動で胸がいっぱいになりました。

田中:そうですね。「やった!」という想いでした。お客様から非常によい反応をいただき、これで間違いないと皆で感じました。この経験が、2年後の全線への展開につながったと思います。


もうひとつの緊張の瞬間

川島:機上で実際にコーヒーをサービスする前に、実はもうひとつ緊張の瞬間がありました。それは、機上で提供するコーヒーの可否を、日本航空の役員会に諮るという瞬間でした。

役員会では、実際にコーヒーを抽出し、皆さんに味わっていただきました。その結果、「こんなにおいしいコーヒーを機上で提供できることは私たちの誇りです」とまで言っていただくことができました。

関わった全スタッフと一緒に作り上げたコーヒーの品質が、認められた瞬間でした。

さらなる進化へ



田中:2009年秋に始まったコーヒープロジェクトは、2011年4月には国内線の全線で、2011年9月には国際線全線での提供を開始しました。

国際線のファーストクラスでは、Grand Cru Caféをフレンチプレスで、国際線のエグゼクティブクラス(ビジネスクラス)と国内線のファーストクラスではCOFFEE HUNTERSをドリップでご提供しています。

さらに、国際線・国内線それぞれのエコノミークラスでは、レインフォレスト・アライアンス認証を取得した農園のコーヒーを使用。国内線エコノミークラスは、当初インスタントコーヒーでのご提供でしたが、機体のリニューアルにより、現在は半分以上がドリップでのご提供に。今後、さらに増えていく予定です。

川島: レインフォレスト・アライアンス認証は、野生生物の保護、土壌と水源の保全、労働者とその家族および地域社会の保護、生計の向上などを目的とした、 環境・社会・経済面の厳格な基準 に則って管理されて作られた商品に与えられています。日本航空のコーヒーは、おいしさはもちろん、トレーサビリティ、そして企業の社会的責任(CSR)にも積極的に取り組んでいます。

当社では、レインフォレスト・アライアンス認証のコーヒーを年々比率を上げていく努力をしてきた結果、2012年には40%、そして2016年にはついに100%にすることができました。実際に、レインフォレスト・アライアンスのNY本部には、日本航空のコーヒーが飾られています。正直、レインフォレスト・アライアンス認証農園のコーヒーを使用するということは、当然コストは高くなります。そんな中、レインフォレスト・アライアンスのコーヒーを100%使用しているエアラインは日本航空だけです。そこまでしていただけていることに、本当に感謝しています。

田中:夏の国内線限定のアイスコーヒーにも、川島さんにご協力いただきこだわりました。さらに、アイスコーヒーにも、レインフォレスト・アライアンス認証農園のコーヒーを100%使用しています。豆の品質も毎年上がり、より香り豊かなアイスコーヒーをお楽しみいただけるようになっています。


反響

田中:2009年のキャンペーン時は、実際に搭乗率が向上しました。また、コーヒープロジェクトのきっかけとなったお客様のアンケートでも、「Grand Cru Caféのファンになりました」など、機内のコーヒーへのうれしいお声をいただけるようになりました。


川島:それは本当にうれしいことです。銘柄は、ファーストクラスとエグゼクティブクラスは3か月毎、エコノミークラスは毎年入れ替えを行っていますので、ぜひ何度でもコーヒーを味わいに搭乗していただきたいですね(笑)

田中:コーヒーをおいしくしたことで、変わったことといえば、こんなことも。機内の砂糖とミルクの消費量が減ったんです。これは、機内でコーヒーをお出しする際に、「まず一口、砂糖・ミルクなしで飲んでみてください」と、客室乗務員が一言添えるようにした結果です。おいしいコーヒーは、砂糖・ミルクで味をごまかす必要がありませんから。

川島:「妥協はしたくありません」と言って始まったこの取り組みで、印象的だったのは、客室乗務員の方々の熱意でした。おいしいコーヒーを自分たちが淹れるんだという意気込みを感じましたね。

田中:日本航空の客室乗務員は、ソムリエの有資格者が多いんです。それだけ、嗜好品へのこだわりの強い人間がそろっているといえるかもしれません。自分で体験しておいしいと思うからこそ、それをお届けしたいという想いを持って取り組んでいます。そして何よりも「世界でいちばんコーヒーのおいしいエアライン」になるのだという強い想いで一丸となった結果ではないでしょうか。今でも、川島さん監修の「コーヒーの淹れ方」を確認しながら、機上でのサービスに備える日々です。

川島:本当に頼もしいですね。これからもご一緒に、機内で本当においしいコーヒーを届けていきましょう。



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