
コーヒーの生産国として知られる中米・エル サルバドルの中でも、グアテマラ国境に近いサンタ アナ地方は、火山灰性の土壌から上質の酸味を持ったバランスの良いコーヒーを産出する。
2008年、僕は特級畑を探すためにサンタ アナ火山山麓を走り回っていた。そこで「セルバ ネグラ農園」と運命的な出会いをした。それまで見たことのないコーヒー樹に付いている赤い実は、他の品種と比べて大粒で、その上チェリーを指で抓むととっても甘いミューシレージ(豆を覆う粘質)が滴り落ちてきた。この地域で「ケニア」と名付けられた不思議なコーヒーに、一瞬にして僕は魅了されてしまった。生産性が低いので、コーヒーからアボカド栽培に切り替えようとしていた農園主に、“この品種を守り、増やして日本に紹介しよう”と説得し、僕の想いに共鳴してくれた農園主によりこの樹は残された。この樹で育ったケニアは、後にGrand Cru Café「セルバ ネグラ農園」として日本でデビューすることになる。