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コロンビア

ベジャビスタ農園

ベジャビスタ農園は最高品質のコーヒーを生態系を守りながら栽培することを趣旨にしている農園。土壌や気候に加え、湧き出る水も素晴らしく、その水で洗った豆は最高の仕上がりとなる。

【風味の傾向】
ミルクチョコレートの風味とフルーティーで優しい酸の見事な調和。濃厚な甘みが舌全体を包み込む。なめらかで透き通る余韻。
生豆生産国:コロンビア
生豆産地:カウカ県 ポパヤン市
農園:ベジャビスタ
セクション:グアジャバル
農園主:アルマ ジュリエス カストロ デ レボジェード
標高:1,950m
栽培品種:アラビカ種 カトゥーラ
サイズ:スクリーン 16~18

味、香りの特徴

2008年度

強い柑橘系のアロマと軽いナッツ系のアロマがある。爽やかなレモンを思わせるようなフレーバーと酸味があり、心地よい渋みもある。ボディが強く酸味の質が高い。

2009年度

柑橘系の爽やかなアロマとキャラメルのような甘いアロマ。旨味のある酸味、渋味があり、甘みも強く感じられ、ボディ感強い。

2010年度

オレンジの爽やかなアロマ。柑橘と甘いチョコレートのフレーバーがある。口当たりから酸味と甘味が同時にあり、複雑でボディが強い。ナッツのような甘い余韻が長く続く。

2012年度

柑橘系のアロマとフレーバー、ナッツのような甘みと繊細ながら凛とした酸味をしっかりとしたボディが支えている。複雑で優しい後味が印象深い。

2013年度

チョコレートを思わせる甘いアロマ。オレンジをはじめ様々なフルーツのフレーバーが感じられ、ジューシーで複雑な味わい。甘みをともなう酸味が心地良く、マウスフィールはミルクココアのようになめらか。

2014年度

ミルクチョコレートを思わせる甘いフレーバーと甘み。その甘みに包まれた酸はマンダリンを感じさせる。マウスフィールはミルクココアのようになめらかで余韻が長い。

2015年度

ミルクチョコレートの風味とオレンジのような優しい酸の見事な調和。濃厚な甘みが舌全体を包み込む。滑らかで透き通る余韻。

2016年度

オレンジのような柔らかな酸味とミルクチョコレートを思わせる濃厚な甘みが見事に重なりあう。透明感のある余韻が繊細に長く続く。

2017年度

ネーブルオレンジ、グアバの風味からキャラメル、ハニーミルク、チョコレートの余韻に変化する複雑な味わい。水飴のような質感、凝縮感のある香りに圧倒される。

2018年度

ミルクチョコレートのアロマ。濃厚なはちみつの風味と軽やかなレモンの酸味。温度が下がるとトロピカルフルーツの特徴を持つ白ワインのような香りを放つ。終始明るいトーンで眩い美しさすら感じる。

2019年度

ハチミツのように濃厚な甘さがゆらめく香り。零れ落ちるほどにジューシーで、それでいて華奢な優しさを持ったネーブルオレンジの酸味。そこにカカオや黒糖の香ばしいニュアンスが重なり、柔らかさと濃厚さが絶え間なく訪れる。

2020年度

蜂蜜にも似たとろみを感じる滑らかな口当たり。温州みかんのような爽やかで心地良い酸味はまどろみに身を委ね、キャラメルを思わせる濃厚な甘みの海へと溶けていく。お米のジェラートとハーブやゴマなどのアクセントにより、まるでデセールを一杯のカップに集約したかのような味わいを持つ。

2021年度

蜂蜜の香りと柑橘類の瑞々しく爽快な酸に、琥珀糖の煌めきと艶やかさを思わせる飲みくち。それらが魅せるのは、光り瞬く波打ち際の鮮やかで甘い物語

ベジャビスタ農園について

ベジャビスタ農園では、恵まれた環境の中、その生態系を守りながら栽培することをテーマにしている。そのため、44ヘクタールの農園の中で、7ヘクタールの原生林を手付かずで残し、ポパヤン大学と共同で生物多様性の研究を行っている。彼らの自然環境と労働環境への取り組みが実を結び、ベジャビスタ農園は2008年、地球環境保全のために熱帯雨林を維持し、持続可能な農業をサポートすることを目的に設立された国際的な非営利団体、レインフォレスト・アライアンス(RA)の認証を取得した。

コロンビアでのグラン クリュ カフェ探し~モレーノ博士の協力~

日本の三倍の面積があり産地が分散しているコロンビアで、グラン クリュ カフェに相応しい「特級畑」を見つけ出すのは容易なことではなかった。

壁にぶつかっていた時に手を差し伸べてくれたのは、コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC: Federación Nacional de Cafeteros de Colombia)の品質管理部長エドガー モレーノ博士だった。
モレーノ博士は、コーヒー業界では世界的権威のある化学者で、現在のコロンビアの品質規格とカッピングフォームを作りあげた、コロンビア中のコーヒー産地を熟知している人物だ。2007年末、長年付き合いのあるモレーノ博士にグラン クリュ カフェのコンセプトを話したところ、それこそ最高級コーヒーを求める自分の考えと同じだと、即座に協力を申し出てくれた。

コロンビアにいる博士からは、次々と候補地区や農園の情報が入ってきた。だが僕の触手はなかなか動かなかった。それらはスペシャルティコーヒーとしては充分過ぎるほど条件が備わっていたが、僕が求めるレベルには及ばなかったのだ。これはという情報が集まらず、僕の作ったスペックが厳し過ぎるのではと弱気にもなったが、品質を追求する博士は辛抱強く僕の要求に応えてくれ、僕がコロンビアに調査に行った折には、多忙な中でもいつも全行程同行してくれた。こうして、博士と現地での農園探しが始まった。

家族が飲むため、特別に選ばれたセクション


僕がコロンビア最初のグラン クリュ カフェに選んだのは、コロンビアの南西ポパヤン市の郊外にある比較的新しいベジャビスタ農園だった。

太平洋に面したカウカ県の県都ポパヤンは、1537 年にスペイン人が大西洋側のカルタヘナから太平洋側のペルーやエクアドルに抜けるルートを作る際に侵略したインディオの町。主要道路沿いに位置するため重要な行政都市となり、17 世紀以降にはキリスト教教会や修道院が多く建設された歴史ある町だ。


1730年から1732年頃、東部のベネズエラとの国境付近でオリノコ河の源流にほど近いタバヘの町にあるサンタ テレサのキリスト教修道院に、宣教師ホセ グミジャが植えたコーヒー樹がコロンビアのコーヒーの起源とされている。そしてグミジャ宣教師が次にコーヒーを植えた場所がポパヤンだった。1736年のことだ。


ベジャビスタ農園のオーナーであるイヴァン トマス レボジェードは長年サトウキビ農園で働いてきたが、2000年、退職を機に土地を手に入れ妻のアルマとコーヒー栽培を始めた。この農園では、恵まれた環境の中、その生態系を守りながら栽培することをテーマにしている。そのため、44ヘクタールの農園の中で、7ヘクタールの原生林を手付かずで残し、ポパヤン大学と共同で生物多様性の研究を行っている。彼らの自然環境と労働環境への取り組みが実を結び、ベジャビスタ農園は2008年、地球環境保全のために熱帯雨林を維持し、持続可能な農業をサポートすることを目的に設立された国際的な非営利団体、レインフォレスト・アライアンス(RA)の認証を取得した。


農園内の原生林のあちこちにはコンコンと湧き出る泉があり、斜面を歩いた喉を潤してくれる。「なんて甘い水なんだ!」この水で洗ったコーヒーを想像すると、思わずワクワクしてきた。

農園では高度によって3つの品種を分けて栽培していたが、高地のカトゥーラは特に素晴らしい出来栄えだった。そしてその中でも山の西側の斜面、標高1,935〜1,950メートルのエリアの「グアジャバル」と呼ばれているセクションに、僕は惚れ込んでしまった。


グアジャバルとは、スペイン語で"グアバの木がたくさん植えてある場所"という意味だ。実際にコーヒー樹の合間に、シェイドツリーとしてグアバの樹が植えられている。 コロンビアを代表するノーベル賞作家ガルシア マルケスは、パリに住んでいた時、故郷への郷愁でグアバの香りを懐かしんだ。彼の小説にもグアバの話が良く出てくるので、この大作家を敬愛するイヴァンは、シェイドツリーとしてグアバを選んだ。そしてこのグアバの樹の下、アラビカ種カトゥ−ラがのびのびと成長していた。
僕はここを特級畑に選定した。


グアジャバルで収穫されるコーヒーには非常にフルーティーな香りがある。ようやくコロンビアで最初のグラン クリュ カフェの候補が見つかった、と喜んだのも束の間、精選工場に寄って絶句してしまった。ここでは、果肉除去したコーヒーを機械で乾燥していたのだ。 僕は100パーセント天日の自然乾燥しかグラン クリュ カフェとして認めていない。「あなたも、あなたの農園も大好きだ。でも天日乾燥でなければ、残念ながら僕のスペックに合わない」。僕はそう言い残して農園を後にした。


翌2008年5月、再びこの農園を訪れた。満面の笑顔で僕を迎えてくれたイヴァンとアルマ。前回の訪問では、まず事務所兼住居に寄って農園で採れたグアバやバナナを振舞ってくれたが、この時は会うなり僕の手を取るとすぐに工場の方に誘った。ふと見るとそこには、コロンビア独特の天日乾燥設備の屋根が並んでいた。イヴァンは悪戯っぽい顔を僕に向け、大きくうなずいた。僕達は、何も言わずに抱き合った。
イヴァン、ありがとう。

こうして、新しい極上のコロンビアコーヒーをグラン クリュ カフェとして紹介できることになった。

悲しい知らせ・・・そして新たな決意。

2011年5月、突然の悲しい知らせが僕に届いた。イヴァンが急逝したというのだ。
僕は4月末にポパヤンを訪問していたが、その数週間後の5月22日、農園に向かう途中の車内で心臓発作に襲われて亡くなったとのことだった。

今年の作柄をチェックして3人で夕食を食べたのはついこの間だ。『ホセ、おまえと一緒に働き出して、農園全体の品質が上がってきたよ。仲間に入れてくれて本当にありがとう』彼が僕に言ってくれた言葉が忘れられない。そのときが彼との最後の食事になるとは想像もできないほど、彼は元気でエネルギッシュだったのに...。

9月になり、予定通り農園を訪れた。農園も工場も家もそのままだが、当然ながらイヴァンの姿はなかった。気丈にも笑顔で迎えてくれたアルマだったが、収穫の話になると「グアジャバルの畑の収穫が始まる直前にイヴァンが亡くなってしまい、今年は一粒のコーヒーも渡せない。本当に申し訳ない」と泣き崩れた。

翌2012年3月の訪問で半年ぶりに会ったアルマは、以前よりずっと逞しくなっていた。そしてイヴァンの前妻との娘を紹介しながら「未亡人の農園だと馬鹿にされないように、これからは女二人でこの農園を守っていく。イヴァンが死んでもベジャビスタのグラン クリュ カフェが存在する所を見せることが、イヴァンへの供養だわ」と力強く話してくれた。僕は彼女のその姿にホッとした。
絶対にグラン クリュ カフェのファンを裏切らない、とアルマは誓ってくれたのだ。
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