最上のコーヒー Grand Cru Café グラン クリュ カフェ
コロンビア ランチェリア農園
ランチェリア農園はコロンビアでは、もはや幻となってしまった純正のティピカ種を自然に近い状態で育て続ける農園。その味はまさに昔ながらのコロンビアコーヒー。
【風味の傾向】 香ばしい風味としっかりとした甘みが特徴的。クリームのようになめらかな口当たりで、和菓子にも合うマイルドコーヒー。
- 生豆生産国:コロンビア
- 生豆産地:ノルテ デ サンタンデール県
サラサル デ ラス パルマス地区 - 農園:ランチェリア
- セクション:カサ デ トゥルピアル
- 農園主:ホセ ダリオ ビジャン メディーナ
- 標高:1,400m
- 栽培品種:アラビカ種 ティピカ
- サイズ:スクリーン 16~18
味、香りの特徴
ランチェリア農園について
コロンビアの首都ボゴタから国内線で約1時間、北サンタンデール県の県都ククタは、ベネズエラ国境から6キロしか離れていない。そこから1時間半掛かって山岳地帯のサラサールについた。更に1時間ほど奥地に入ると、このサラサール地区でいまや貴重となった純正のティピカ種を栽培しているランチェリア農園がある。人里離れた山奥で、他品種と交雑せずに奇跡的に純正種は守られていた。
5ヘクタールというこの小さな農園のオーナーであるホセ ダリオは、父親が開いた農園を譲り受け、収穫期以外は一人で農作業をしている。農法はほとんど粗放農業に近く、化学肥料も農薬も一切使っていない。有機栽培の認証を取得しようにも、辺鄙過ぎてそれもできない。しかしホセ ダリオにとって、そんなことはどうでもいいことだ。今まで通りコーヒーを作り続ける。
幻のコロンビアコーヒー復活
僕の父親は、コーヒーの焙煎卸業を営んでいたが「昔のコロンビアコーヒーを飲みたい」とよく言っていた。それほど極上の味と香りがしたのだろう。だから僕は今回、幻となったコロンビアコーヒーを再現させグラン クリュ カフェに加えたかった。そこでコロンビアのコーヒーの歴史を調べることから始めた。
コロンビアで最初にコーヒーが栽培されたのは、1730年から1732年に東部のベネズエラ国境の町でオリノコ河の源流に近いタバヘのサンタ・テレサのキリスト教修道院だった。その後、コロンビア国内各地に紹介されたが、どれもキリスト教関連施設での消費用に栽培されていた程度だった。
1834年ボゴタ出身の24歳の若いフランシスコロメロ神父が、カリブ海のドミニカから北サンタンデール サラサールに転勤してきた。当時ドミニカでは、コーヒー栽培は盛んに行われていて、布教の傍らコーヒー栽培を習得したロメロ神父は、この地がコーヒー栽培に適していることを認識し、貧しい農民達にコーヒー栽培で生計を立てさせようと考えた。
しかし一向に新しい作物に興味を引かない農民に、どうやってコーヒー栽培を始めさせるか考えたロメロ神父は、懺悔に来る信者達に対し、神が罪を許す代わりにコーヒーの苗を植えなさいと諭し、教会で作っていたアラビカ種ティピカの苗を農民に与えた。更に周辺で栽培されていたコーヒーを集荷し、1835年県都の名前を取ってククタ コーヒーとして2,592袋、ベネズエラのマラカイボ港から輸出した。これが、コロンビアコーヒーの初めての輸出となった。その後、サラサール周辺は、コロンビアで最初のコーヒーの商業的栽培地区となったが、現在ではコーヒー栽培は、コロンビアの中西部山脈が中心となり、また革命ゲリラが活発に動いていた時期は、この地域は危険で自由に行き来ができなかったこともあり、コーヒー産地としても取り残されてしまった。そこでここに行けば、当時栽培されていたティピカ種が残っているのではないかと仮説を立てコロンビアに旅立った。
しかし中々気に入った農園に出くわさなかったし、複数の品種が同じ畑で栽培されていて交雑していてがっかりした。「昔ながらのティピカ種はここにも残っていないのだろうか」。そう諦めかけたときに探し出したのがランチェリア農園だった。
鬱蒼とした日陰樹の下でコーヒー樹は、剪定もされず自然に育っていたのだ。通常こんな状態では、高品質のコーヒーは望めないが、土壌が素晴らしく豊かで、多過ぎる日陰樹からの落葉でさらに土が肥え、日陰が強過ぎて開花が少ないからもちろん実付きも悪い。結果、自然の摘果をしている状態になり、少量しか収穫できないが密度の高いコーヒーが生まれている。僕は興奮して汗ダクになりながら急斜面を歩いた。ティピカ種を見て回ると上部のセクションが日射量も多く、チェリーの品質が良かったのでグラン クリュ カフェに選んだ。
このセクションは、カサ・デ・トゥルピアル(ツリスドリの家)と呼ばれている。ツリスドリは木の上に巣を作る習性があり、この丘のコーヒーのシェイドツリーに営巣するからだ。ホセ ダリオに言われて空を見上げたら、トゥルピアルが気持ち良さそうに真っ青な空を飛んでいた。
収穫したコーヒーチェリーは、その日の内に彼が担いで山を下り自宅に運んでくる。果肉除去から乾燥まで、ホセ ダリオが独りで作業している。自宅前の小さなパティオが、彼の乾燥場だ。昔ながらの果肉除去機も横にある。すべてがコンパクトにできている彼の自慢の工場だ。