ピンク ブルボンとの出会い
エル サルバドルは、僕が1975年に国立コーヒー研究所でコーヒー栽培の勉強を始めた地です。当時、現地の農園では熟すと赤くなるタイプと黄色くなるタイプはありましたが、ピンク色になるピンク ブルボンは栽培されていませんでした。唯一、研究所の試験区で栽培されていたピンク ブルボンを飲んでみたところ、通常のブルボンよりも甘みが強く感じられました。その後、たまに農園で見かけることはあったのですが、いつのまにかなくなってしまいました。
ピンク ブルボンとの再会
2009年1月にエル サルバドルを訪問した際に、偶然訪れたサンタ アナ地方のサン ルイス農園で、僕は30年ぶりにピンク ブルボンに再会したのです。その時の興奮は今でも忘れられません。また僅かですが、バルサム山脈に位置するサン アンドレス農園にもあるという情報を得て、両農園に他の品種と分けて収穫してもらうように依頼しました。
精選・乾燥・熟成が終わった6月に再びエル サルバドルを訪問しました。精選工場の品質鑑定室のターンテーブルに並べられたピンク ブルボンを前にして、僕は緊張していました。新しい産地や品種を発掘する度に経験することですが、完成したコーヒーの品質をチェックする瞬間は、胃が痛くなるほど緊張します。しかしテイスティング用のスプーンで口に含んだピンク ブルボンは、僕にあの独特のさわやかな甘さの記憶を甦らせてくれ、緊張感から解放されました。おいしいコーヒーだ!
ピンク ブルボンの特徴
通常の赤や黄色に実るブルボン種と比較して、収量は半分以下です。それがこの品種が普及しなかった理由です。また通常よりやや多めの日陰を好む傾向も見られました。この品種にとって適度な日陰の下で育つと、ピンク色に熟しますが、日当たりのよい枝の実は少し黄色がかかります。生豆では、それほど意識しませんでしたが、焼きあがった豆はよくふくらみ、通常のブルボンよりも丸みを持っています。