イヴァンの思い出
コロンビア南部のカウカ県ポパヤン市郊外のベジャビスタ農園。僕がGrand Cru Caféのコーヒーを探し求めてこの農園を初めて訪ねたのは、2008年1月のことでした。農園主のイヴァン トマス レポジェードは品質向上にとても熱心で、また、自分の農園をとても愛する生産者でした。そして僕が惚れ込んでしまった畑"グアジャバル"と出会い、彼とふたりで最高のコーヒー作りが始まりました。でも僕には、グアジャバル以外にも目をつけていた畑がありました。グアジャバルとは別の尾根に広がるこのなだらかな畑は、日射量も豊富で土壌にも恵まれていましたが、カトゥーラの樹々の合間に別の品種が植えられていました。そしてそれを抜根して100%カトゥーラの畑にしようと持ちかけたのです。イヴァンはとても興奮して目をキラキラさせながら僕の話を聞き、その計画に賛同してくれました。
しかし、2011年5月22日、イヴァンが農園に行く途中に心臓発作に襲われ急逝してしまいました。僕は打ちのめされた思いでした。しかし、妻のアルマがイヴァンの意志を受け継ぎ、「未亡人の農園だと馬鹿にされないように、これからは娘と女二人でこの農園を守っていく」と力強く話してくれたのです。 そして、イヴァンと計画していたそのカトゥーラの畑で完熟豆を収穫し、日本に送ると約束してくれました。
イヴァンとアルマと3人で何度も歩いた思い出の畑。僕は、この畑を"Recuerdo de Ivan (イヴァンの思い出)"と名付けました。