
2010年度のGrand Cru Cafeのラインナップにブルーマウンテンコーヒーが加わりました。80年代の最高においしかったブルーマウンテンコーヒーの復活です。当時に比べると、現在では生産量も10倍で玉石混合となってしまったブルーマウンテンコーヒーですが、素晴らしい生産者も素晴らしいコーヒーもGrand Cru Cafeを待っていてくれました。
生産者とともに特級畑を探し出し、栽培から収穫、精選などをGrand Cru Cafeの品質基準に合わせ、80年代のブルーマウンテンコーヒーにさらに磨きをかけた「カリブの宝石」Grand Cru Cafeブルーマウンテンコーヒーを作り上げました。
非常にバランスのとれたコーヒー。強いボディー・奥深い甘味、カップから漂う香りは 強く、飲んだ後にも長く続く。アフターテイストは絶品。
一口にブルーマウンテンコーヒーと言っても、栽培される地域によってその味は異なります。ジャマイカのブルーマウンテン山脈の北斜面と南斜面では、土の質も気候も違いますから、風味が変わるのは当然なのです。しかし、これまでこのような説明はされてきませんでした。
僕は、1981年から1989年までの7年半、ブルーマウンテンコーヒーの開発、買い付けの仕事でジャマイカに駐在しました。ですからMi Cafeto社を設立しGrand Cru Cafeの販売を始めた際、古くからの知人達から、どうしてブルーマウンテンコーヒーも販売しないのかと尋ねられました。
理由は、簡単です。僕がジャマイカにいた当時のブルーマウンテンコーヒーが、今では手に入らなくなってしまったからです。当時のブルーマウンテンコーヒーの総生産量は、130トン足らずでしたが、現在ではその10倍前後生産されています。昔のブルーマウンテンコーヒーの素晴らしさを知っている僕は、今のブルーマウンテンコーヒーをGrand Cru Cafeに加えることはどうしてもできなかったのです。
また僕はこれまで、日本で一般にされているブルーマウンテンコーヒーの説明に誤っているものも多いことを非常に残念に思ってきました。本物のブルーマウンテンコーヒーが語り継がれなければ、正当に評価されることが出来ません。
ブルーマウンテン山脈を中心とした地域で栽培されたコーヒーが、ブルーマウンテンコーヒーで、その他の地域で収穫されるのが、ハイマウンテンコーヒーとプライムウオッシュと呼ばれます。海からブルーマウンテン山脈に登って行き、300メートルを越すとブルーマウンテンコーヒーエリアが始まります。上限はありませんが、1,500メートルを越すと寒過ぎて栽培には向いていません。日本では、ブルーマウンテン山脈の800メートル~1,200メートルが栽培地域と明記しているものが多く、中には中腹で栽培されるのがハイマウンテン、低地がプライムウオッシュドなどと説明されていることもありますが、これは正しくありません。
Grand Cru Cafeのジュニパー・ピーク農園は海抜1,370メートル。ブルーマウンテンコーヒーの最大の特徴、バランスの良さと後を引く香り、そして甘味を兼ね備えたコーヒーです。
栽培から収穫、精選加工、乾燥、選別、出荷、輸送方法、生豆の保管方法、焙煎、包装まで、全工程に厳しい規格を求めるGrand Cru Cafeは、生産者の全面的な理解と協力が無ければ実現しません。ブルーマウンテンのように、ブランドとして確立され黙っていても売れるコーヒーの生産者は、その知名度の高さゆえの安心から、品質を向上させる努力をしないだろうとGrand Cru Cafeの発売当初は考えていました。しかしながらGrand Cru Cafeの評判が世界に知れ渡れば、必ずや品質向上に真面目に取り組むジャマイカ人生産者がこのコンセプトに名乗りを上げるであろうこともまた、僕は信じていました。
そしてもしジャマイカで最高のブルーマウンテンコーヒーを一緒に作るのであれば、この男達しかいないと常々思っていたシャープ兄弟が、昨年10月、東京の僕のコーヒーセラーを訪ねてきました。彼らとは10年以上の付き合いですが、一度もビジネスをしたことがありません。しかしどうしたらコーヒーの品質を上げられるか、いつも議論してきた仲です。そして、やはり彼らは、やって来ました。
今年2月、6年振りにジャマイカを訪問し、シャープ兄弟の経営するジュニパー・ピーク農園を訪れ、彼らとくまなく農園中を歩き回り、Grand Cru Cafe用の特級畑を峻別しました。そして土壌、気温、日射量、雨量あらゆる基準をクリアした標高1,360メートルのPlot 4をGrand Cru Cafeセクションと決定しました。もちろん品種は、ブルーマウンテンの在来種アラビカ種ティピカの単一品種の畑です。
しかし問題がありました。彼らの精選・加工は、果肉除去後のミューシレージ(豆の周囲に付着した粘質)を取り除くのに、機械を使っていました。Grand Cru Cafeの規定では、昔ながらの自然に分解・剥離させる方法を取らなくてはなりません。そこで彼等は、Grand Cru Cafeのために急遽その施設を作ってくれました。

収穫が始まる4月、再びジャマイカを訪問し収穫に立ち会いました。通常ブルーマウンテンの収穫は9月から始まりますが、高地の最高級品の収穫は、半年遅い3月から始まります。しかしGrand Cru Cafeの収穫は、Plot 4のコーヒーが最高密度に達する4月まで待ってから完熟豆だけを収穫し、昔ながらの製法で乾燥は100%天日で仕上げました。90日の熟成の終わった8月の末に、再度ジャマイカを訪問し最終精選作業に立ち会いました。脱穀機から出てくる深い緑色に輝くコーヒー豆は、まさしく久し振りに再会する「カリブの宝石」でした。
生豆を見た瞬間、これは絶対おいしいコーヒーだと確信しましたが、そこからさらに選り分けて磨きをかけなければなりません。そこでカップテイストをするに当たり、豆をサイズ別にスクリーンサイズ17、18、19のカップに分けてもらいました。ブルーマウンテンには、品質によってNo.1~No.3まで3等級があります。80年代のブルーマウンテンNo.1は、スクリーン19以上でしたが、現在では17以上に変わりました。
緊張する一瞬でしたが、やはりスクリーン19のカップは突出していました。思わず口元が緩み、シャープ兄弟と目が合うとお互いに歩み寄り抱きしめ合いました。我々は、あの最高においしかった80年代のブルーマウンテンコーヒーの再現に成功しました。
カップテイストでGrand Cru Cafeの品質として認められたコーヒーは、輸出の準備に入りました。スクリーン19だけを選り分けて、そこからさらに欠点豆を取り除きます。 ジャマイカでは、伝統的にテーブルで選別を行います。それぞれの自分の机が決まっています。そして熟練度によって選別できるグレードも違います。もちろんGrand Cru CafeはNo.1グレードですが、選別作業はその中でもさらに熟練の女性達に当たってもらいました。

通常ブルーマウンテンコーヒーは、キングストン港からカリブ海を就航する船に乗せられ、アメリカのニューオリンズに運ばれます。そこからカリフォルニアまで陸路で輸送し、再び船に乗って太平洋を航海してきます。長旅の中で、時としてコンテナ内部は、60度以上に温度が上がってしまいます。そこでGrand Cru Cafeは、全量空輸しています。
成田田空港に到着したコーヒーは、通関後直ぐに小分け作業に入ります。500グラムの特製プラスチックの袋に脱酸素剤と一緒に入れ、18度の定温で保管します。
このように、生豆に良いと思われることは全てやりつくし、最後の難関が焙煎です。ジュニパー・ピーク農園ブルーマウンテンコーヒー2010の特徴を最大限出せる焙煎度合いを、ロースティングマスター近藤くんと一緒に追求しました。焙煎の温度と時間に変化を付けて、焙煎・テイスティングを繰り返し、ようやく2010年の焙煎プロファイルを完成させました。
こんなにおいしいブルーマウンテンコーヒーを飲んだのは、僕も初めてです。その味わいには、長年の夢を実現させた感動がいっぱいです。