
ベジャビスタ農園(コロンビア)は最高品質のコーヒーを生態系を守りながら栽培することを趣旨にしている農園。土壌や気候に加え、湧き出る水も素晴らしく、その水で洗った豆は最高の仕上がりとなる。
*ベジャビスタ農園の2009年度は収穫量が少ないため単品での購入はできません。
なお、コーヒーセラーオーナーズではお楽しみいただくことができます。
2008年度は独特の強く甘いアロマ&フレーバーがあり、その中に柑橘系の酸味がある。2009年度はフルーツ系の香りが強く、やや渋味を感じる。
強い柑橘系と甘いナッツのフレーバーが特徴。口当たりから甘味が強く複雑な味をもつ。
昔のコロンビアン マイルド コーヒーを再現させようと思い、歴史の調査から始めたが、何回も壁にぶち当たった。その時に手を差し伸べてくれたのが、コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC: Federación Nacional de Cafeteros de Colombia)の品質管理部長エドガー・モレーノ博士と、東京事務所駐在員ナチョ・ベラスコだった。モレーノ博士は、コーヒー業界では世界的権威の化学者で、現在のコロンビアの品質規格とカッピングフォームを作りあげ、コロンビア中のコーヒー産地を熟知している人物。そしてナチョは、駐在2年目の若いエネルギッシュなコーヒーマンだ。
2007年末、長年付き合いのあるモレーノ博士に、Grand Cru Cafe(グラン クリュ カフェ)のコンセプトを話した。それこそ最高級コーヒーを求める、自分の考えと同じだと即座に協力を申し出てくれた。それからコロンビアにいる彼とのメールでのやり取りが始まり、僕の親友のナチョがそれに加わった。しかし僕の作ったスペックは、あまりにも厳し過ぎて随分我儘を言ったが、品質を追求する博士とナチョは辛抱強く応えてくれた。そして僕がコロンビアに行く度に、多忙なモレーノ博士が全行程同行してくれ一緒に候補の農園を探した。

このベジャビスタ農園は、コロンビアで最初にGrand Cru Cafeの畑に選んだ農園。それもナチョの生まれ故郷ポパヤンの農園だった。彼は、それを心の底から喜んでくれた。
ベジャビスタ農園は非常に新しい農園だ。オーナーのイヴァン・トマスは長年サトウキビ農園で働いてきたが、2000年、退職を機に夫婦でコーヒー栽培を始めた。農園では高度によってコーヒーの品種を分けて栽培しているが、今回は山の西側の斜面、海抜1,935〜1,950メートルのエリアから「グアジャバル」と呼ばれているセクションをGrand Cru Cafe専用にした。「グアジャバル」とはスペイン語でグアバの木がたくさん植えてある場所という意味。実際にコーヒーの合間にシェードツリーとしてグアバの木が実を付けている。
この農園で昔のコロンビアマイルドの再現をすることはできなかったが、新しい極上のコロンビアコーヒーを紹介できることになった。
コロンビアの西南、太平洋に面したカウカ県の県都パポヤンは、1537 年にスペイン人が、大西洋側のカルタヘナから太平洋側のペルーやエクアドルに抜けるルートを作る際に侵略したインディオの町。主要道路沿いに位置するため重要な行政都市となり、17 世紀以降にはキリスト教教会や修道院が多く建設された歴史ある町だ。
1730年から1732年に東部のベネズエラ国境の町でオリノコ河の源流に近い、タバヘのサンタ・テレサのキリスト教修道院に、宣教師ホセ グミジャが植えたコーヒー樹が、コロンビア コーヒーの起源とされている。そしてグミジャ宣教師が次にコーヒーを植えた場所が、ポパヤンだった。1736年のことだ。

コロンビアでも古い歴史を誇るカウカ県の古都ポパヤンに行けば、古いコーヒーがあるかも知れないと仮説を立てて農園を探し、出会ったのがベジャビスタ農園だった。イヴァンと奥さんが営むこの新しい農園は最高品質のコーヒーを、生態系を守りながら栽培することを趣旨にしている。そのため、44ヘクタールの農園の中で、7ヘクタールの原生林を手付かずで残し、ポパヤン大学と共同で生物多様性の研究を行っている。彼らの自然環境と労働環境への取り組みが実を結び、地球環境保全のために熱帯雨林を維持し、持続可能な農業をサポートすることを目的に設立された国際的な非営利団体、レインフォレスト アライアンス(RA)の認証を今年取得した。
原生林のあちこちにコンコンと湧き出る泉があり、斜面を歩いた喉を潤してくれる。「なんて甘い水なんだ!」この水で洗ったコーヒーを想像すると、思わずワクワクしてきた。

農園では3品種を高度別に分けて栽培しているが、農園高地のカトゥーラは素晴らしい出来栄えだった。特に「グアジャバル」と呼ばれていたセクションに実るカトゥーラに強く惹かれた。イヴァンの大好きなコロンビアを代表するノーベル賞作家、ガルシア・マルケスがパリに住んでいた時、コロンビアへの郷愁でグアバの香りを懐かしみ、彼の小説にもグアバの話が良く出てくるので、この場所にグアバを植えたそうだ。ここで収穫されるコーヒーにも非常にフルーティーな香りがある。
ようやくコロンビアで最初のGrand Cru Cafeの候補が見付かったと喜んだのも束の間、精選工場に寄って絶句した。ここでは、果肉除去したコーヒーを機械で乾燥していた。僕は100パーセント天日の自然乾燥しかGrand Cru Cafeとして認めていない。「あなたも、あなたの農園も大好きだ。でも天日乾燥でなければ、残念ながら僕のスペックに合わない」。僕はそういい残して農園を後にした。

そして、2008年5月に再びこの農園を訪れた。満面の笑顔で僕を迎えてくれたイヴァンと奥さん。前回は、事務所兼住居に寄って農園で採れたグアバやバナナを振舞ってくれたが、この時は僕の手を取ると工場の方に誘った。ふとみるとそこには、コロンビア独特の天日乾燥設備の屋根が並んでいた。そして悪戯っぽい顔を僕に向け、大きくうなずいた。僕達は、何も言わずに抱き合った。イヴァン、ありがとう。